もう、30数年くらい前のことです。
当時、SEとして販売管理や顧客管理のシステム開発のSEでした。
仕事の仕方は、東京都内のユーザーを訪問し打合せをし、
新潟に帰って仕様書を書いて、都内のプログラマーに開発を依頼し、
システムのテスト・修正をして導入していました。
創業3年目頃に、汎用機のCOBOLの開発が激減し、
このやり方が通用しなくなりました。
そこで、提案営業を考えていた時のことです。
親戚に、美容院を数店舗経営しているAさんがいました。
美容院は、奥さんに任せて自分はいろいろ商売をやっていました。
Aさんからは、以前から提案書を作ってくれと言われ..
会社員時代からビジネスの提案書なるものをつくっていました。
その時の依頼は、新規事業で伸びている会社があるから、
そこに営業マンの研修を売込たいと言うことです。
その会社には、Aさんの親しい人が取締役で入っているので、
提案の内容さえ良ければ採用されるからということです。
そこで、図解をいれて分かりやすく作ってくれという依頼でした。
ついでに一緒に行って説明もしてくれと言うことです。
都内の会社でしたし、私も東京へいく予定がありましたので、
一緒に行くことになりました。
私にとっては、営業の勉強にもなると思いました。
営業の現場はどうなんだろうとワクワクしながら行きました。
その会社は、新規事業をたちあげて1年ほど経過し、
全国の中小零細企業の経営者が、
新しい事業の1つにしようとどんどん集まっていました。
人が集まると同時に、たくさんのお金も動いていました。
提案の説明には、社長をはじめ幹部数人の方が同席され、
Aさんの親しい人もいました。
私も何度か会ったことのある方でした。
こちらが提案の説明をする前に、その会社の社長が
会社の目指してることや現状の説明をしてくれました。
話しだすと止まりません。
思い入れが強いのか、2時間は熱く語ってくれました。
私は
理念や目標は、素晴らしい..
魅力のある経営者だ..
だから、たくさんの人とお金が集まるんだろうな〜
と感心したものです。
でも..
パンフレットやいろいろな資料を見せていただきましたが..
社長が語る、理念や目標は素晴らしいのですが、
その具体化が上手くいっていません。
配布している資料もわかりにくく
論理展開が弱く、裏付けもありません。
キャッチコピーを、それらしく並べている印象です。
社長の目指す理念を実現するようにつながっていません。
そこで、いろいろ質問していくと..
あやふやな部分や、仕事の仕組みとして抜けている部分が見えてきました。
要するに、仕事の仕組みとしての完成度が低いのです。
結局、提案書を持って行ったのですが..
プレゼンすることなしに終りました。
嬉しい誤算は、営業マンの研修の計画の前に、
今、立ち上げている事業の仕組みを整備しようということになりました。
何も営業っぽい話はしませんでした。
こんな風に、話しました。
私:
「この状態だと、営業マンの話す内容が人によって違います。
仕事の仕組みを、誰でも分かるように整理しないと、
どこかで大きなトラブルになります。」
先方の社長:
「どうやるんだ?」
私:
「仕事を、体系化するんです。
よろしければ、お手伝いしましょうか?」
先方の社長:
「頼むよ!」
営業って、もっと厳しいやり取りがあるんだろうな〜
と思っていたのですが、拍子抜けです。
内容も計画も詰めないまま、決定してしました。
では、「いくらで、どうするんだ?」といことになり、
やろうとしていることは、SEの上流工程の上の工程で難しいので、
「1人月100万円」でどうですか?
(当時のSEの上流工程はその程度でした)
毎週、2日間東京にきて社長にくっついて動きます。
それを、次回の訪問時に分かりやすく図にして持ってきます。
(当時、まだ図解という言葉を使っていないと思います。)
..と言うことで、その場から動くことになりました。
そこから、毎週2日間、その社長にくっついて動きました。
聞いてメモしました。
契約書やカタログ、などなど、何でももらって新潟に帰ります。
そして..
机の上にA3の方眼紙を広げます。
パソコンに向かわないのが、昔風ですね。
当時は、マックを使う前でPC98を使っていました。
もちろん、図を描く機能はありません。
テンプレート(穴空き定規)を使って鉛筆で図を描きます。
図のカタチに凝っていたので、20枚ほどのテンプレートを
使い分け、シャープペンの芯を横に置いたメモ用紙で尖らせて
方眼紙に図を描き、消しゴムで消して、羽ほうきで
きれいにしながら配置を決めて図を描いて行きます。
このような全体像を描いて、詳細にブレークダウンしていました。
神経質なくらい几帳面に、もちろん線の太さは均一です。
図が出来上がったら..
PC98で、文字列を印字します。
その印字した文字を、小さく切りぬいて方眼紙の図の上に
スティック糊で貼りつけます。
それをコピーして出来上がりです。
今から思うと、とんでもないくらい大変な作業です。
社長のゴーストライターなんて言っていましたが、
まさに、図解職人でした。
資料集めですが..
当時は、パソコン通信の時代です。
大きな市にISDNが引かれ始めた時でした。
上越市でも、ISDNが引かれたばかりでした。
今のようにインターネットで情報収集できません。
大量に本を買って、「言葉」を探しました。
かなり大変な仕事でしたが、やりがいもありました。
その会社に入って分かった事ですが..
外からみる会社のイメージとは大違いでした。
外から見ると、新規事業が立上って、大きな事務所を構え、
社員も増え、全国に協力者も増え、売上もあがっている。
社員も元気で、勢いのある会社でした。
でも、中から見ると..
問題がたくさんありました。
特に、クレームの電話と対処が大きな問題でした。
若い営業マンが、電話で30分〜1時間..
謝りながら説明しています。
相手は納得しません。
結局は、上司に代われ社長を出せと言うことになります。
社長が出れば、相手も解決はしませんが納得します。
落ち着いて、電話は終ります。
NTTが儲かるだけでした。
そこで、そのクレームを改善すれば良いのですが..
上司は、若い営業マンの「能力不足」と定義します。
だから、「もっと頑張れ、しっかりしろ!」が対策になり、
若い営業マンは「今後、気をつけます」と終ります。
もちろん、繰り返し同じような問題があちこちで発生します。
いつまでも改善できません。
「もったいない」..こうしか言えません。
この図解は、その体験から作成しました。
そして、そこから根本の原因は何か?
と考えました。
そこで、以下の図解の内容に行きつきました。
新規事業は、社長の頭の中にあることを
・具体化して、
・誰でもできる
・オペレーション(単純作業)に落とし込む
ことです。
どんなに優れたアイデア・技術があっても
「事業のカタチ」にしない限り
経済的価値は生まれません。
そのために
・理念を明確にし
・コンセプト確立し
・共感を得られるビジョンを示し
・事業運営のビジネスシステムを構築する
それが「ビジネス・プラットホーム」となり
その上で、多くの人に上手く動いてもらう
それが大切です!
でも、これが確立していないと..
幹部が集まって会議をしても、
押し出しの強い、声の大きい人の意見が通ります。
内容が無理でも、単純な精神論でもです。
当然、上手く行きません。
新規事業をたちあげた時は..
様々な業種を経験した人が集まってきます。
悪く言えば寄せ集め、良く言えば様々な経験や知識を
持った人の集まりです。
ここで、内容を精査されず声の大きい人の意見が通ると、
困った問題が、どんどん起こってきます。
そんな場面を、この会社でたくさん見させてもらいました。
人とお金が集まると..
いろいろな人がいます。
私より高額の報酬をとっているコンサルタントもいました。
何をコンサルしているですかと聞くと..
社長が日経コンピュータのコピーを出してきました。
これですか??..ビックリです。
でも、その社長はお金を振り込んでいます。
仕事って何だろう?、そう考える場面もたくさんありました。
いろいろ体験させてもらった仕事でしたが..
参加して方、11ヶ月ほどで倒産となりました。
良く言う「頭の黒いネズミ」がいるんです。
当時、まだまだ若かった私は、世の中ってこうなんだ..
ここから、社長のゴーストライターを目指すようになりました。
でも、そうそうこんな仕事も見つかりません。
もちろん実力も足りません。
それから、経験したことを図解で書き溜めるようになりました。
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