上場企業の下請け工場だったが自慢の元社長、受注減で工場閉鎖
以前、新規事業の立上に参加していた時のことです。
そこで、60代の元社長と出会いました。
彼の自慢は、
「上場企業の下請け工場だったんだ、200人使っていた。」
でした。
工場閉鎖した理由は
その上場企業からの受注がほとんどなくなったとのことです。
その結果、工場の維持ができなくなり閉鎖したとのことです。
私は、図解を使って事業の構造を体系化していましたので
社内外の会議に参加したりと頻繁に、その事務所に出入りしていました。
その時に出会った社長です。
会議室や事務所で何度も顔を合わせるようになり、
若かった私は、昔話を聞かせてもらうようになりました。
聞くと、上場企業の下請けになるのは大変だったとのこと。
苦労してやっと下請けになったのが自慢なのでしょう。
でも、すでに工場閉鎖しています。
私は、200人の工場をやって行くのは大変だろうとも思っていました。
そこで、いろいろ体験談を聞きたいと思っていました。
ある時のことです。
「ええ〜????」と感じた出来事がありました。
元社長が、若い女性事務員に「○○って、どうやるの?」と
聞いています。
○○は、かかわっている新規事業の内容ではありません。
仕事の基本のようなことです。
やった事はなくても、自分で考えて工夫するようなことです。
自分で考えないで若い女性事務員に聞くことではありません。
私の頭に浮かんだことは
・自分で考えて仕事をしたことがなかったのでは?
・社長とは言っても、丸抱えの中間管理職だったのでは?
ということです。
下請けとはいえ、200人もの従業員を率いる工場です。
メインの元請けから受注がなくなったとはいえ、
工場閉鎖以外にも道はあったのではと思いましたが、
自分で考えない中間管理職のような社長だったのではないでしょうか?
仕方が無いんだろうと納得しました。
工場閉鎖をさけるには業態転換することが一つの手です。
そのために
・現場の知恵
・中核となる技術
この2つが大切です。
これが、積み上がっていなかったんだろうと想像できました。
だから簡単に工場閉鎖に追い込まれたのです。
発注元の指示に従って作業をする。
指導されないと何もできない体質だったのです。
一方で、同じような規模の工場がありました。
私は、お手伝いさせていただいた案件です。
メインの発注元の工場に「半年後に発注がゼロになる」と、
社長が呼ばれて引導を渡されました。
困った状況は、前の工場と同じです。
でも、そこからしっかり業態転換に成功しました。
どう業態転換したかと言うと、
工場として下請け受注して製品を造るということを止めました。
でも、多品種少量生産のためにを生産ラインを効率的に
組み替える技術に自信がありました。
その自信のあある他品種少量生産の生産ラインの
「組み換えのノウハウ」を商品化しました。
そこで、新しい展開ができました。
工場閉鎖した下請け工場には、指示されて作業をするだけで、
売れるノウハウが積み上げられていなかったのです。
工場の生産技術を他に転用する例をあげると。
酵素入り洗剤『アタック』で業界に打って出た花王は、
「界面活性の技術」によって、80年代後半から
5インチフロッピーディスク(FD)の生産・販売を
はじめました。
その背景には、売上高の約85%を占める家庭用品が
「人口増加の停滞や高齢化社会の到来などで、
国内市場は大きな伸びを期待できない」との、
経営陣の先行き不安があったようです。
当時、私もそのFDをたくさん使いました。
その後、花王はその事業からも撤退することとなりました。
技術の進化は早いですね。
事業の展開を考える方向
現状の事業の「中核技術・知恵」を使って、
それを活かせる分野へ進出します。
業態を考える4つの方向があります。
1.上流へ
現業に仕事を依頼してくれた分野へ
2.下流へ
自分が仕事を依頼していた分野へ
3.モノ商品へ
「知恵・中核技術」でカタチのある商品を作る
4.サービス商品へ
「知恵・中核技術」をサービスにして販売する
ソフト開発の業態転換の例で解説します。
現業の「中核技術」は、ソフト開発です。
1.上流へ行くと
ソフト開発の上流工程である「事業企画・事業提案」
などの業務を目指すことになります。
私も、以前はソフトの開発をしていました。
でも、新規事業のソフト開発に携わると仕様変更が多く、
一緒にやっていたプログラマーに迷惑をかけるので、
事業企画の方に移って行きました。
2.下流へ行くと
システムの運用となります。
オペレータを派遣したり、社内に運用部門をもって、
システムの運用を請け負います。
新しいシステム開発よりも、既存のシステムのメンテナンスの方が
性格的に向いているSEやプログラマーがいます。
比較的移行しやすい展開です。
でも、価格競争に巻き込まれます。
3.モノ商品へ行くと
ソフトの開発ツールを作って、それをパッケージ化し
販売することになります。
開発力のあるソフト会社は、開発を効率化するために
自前の開発ツールをもっている場合は多いので、
比較的移りやすいと言えます。
ただ、広くパッケージとして販売するには、
それなりの完成度でないと売れません。
4.サービス商品へ行くと
開発者の教育・研修ができます。
でも、優秀な技術者はなかなか現場から放せず、
二番手、三番手を講師にすることになります。
新人を育てるならそれで十分ですが、
それだと他社の教育会社との差別化が計りにくくなります。
その他は、図解で掲載しています。
ご覧ください。
今、ネットが進化し社会の仕組みが変わっています。
馬具メーカーのエルメスが自動車の普及による
馬車の衰退を予測して、それまで培った技術を鞄や財布などの
皮革製品の事業に「軸」を移して成功しました。
これから、どの事業でも起こって来ることです。
その変化に対応するための「中核技術・知恵」の整備は
納得できるレベルになっていますか?
うちには優秀な技術者がいるから大丈夫と言えるでしょうか?
逆に優秀な社員に頼ると危険です。
社員は、辞めます。
病気や怪我の危険もあります。
個人に頼る行為は危険です。
優秀な人は、できる人間だけ選んで連れてでるということも考えられます。
一番心配なのは、「技術の陳腐化」です。
LEDが普及し始めた今、白熱電球を効率的に作る技術に
価値は低くなりました。
でも、「事業の再定義が必要性だ!」とわかっていても
「どこから・どう手をつけようか?」と悩むのが現実です。
一度、違う切り口で現状を見てはどうでしょうか?
あなたの事業を、第三者に3分でしっかり説明できますか?
その時間で
・顧客のどんな問題を、
・どんな技術を使って、
・どのような効果を上げらるか
・その裏付けは
・私は信用できる人間です
と、相手に思わせるトークはできますか?
このメールを読んだ時点で、簡単・簡単!
すぐできるよと、やれる会社は社内にある「知恵・中核技術」を
探しだすのは簡単です。
あなたは、できますか?
もしかしたら?
簡単だよと言いながら、枝葉の多い、
内容の薄い説明しかできないとしたら問題です。
そして、最後に実物を見てもらえればわかります。
と言い逃れをすることになります。
見て、わかる商品なら営業マンはいりません。
あなはたがいらなくなります。
一度、自分の商品の説明を整理してみませんか?
未来につながる「知恵・中核技術」を探る一歩になります。
こんな体験から 一覧へ